花と音楽と沖縄と…

ただ単に、その日見たものを記録してるだけの日記です(^^♪

ケアマネさん、頑張って!|#695_岸田首相が「ワクチン後遺症は知らない」と国会で発言…僕、泣いてええですか?

★(14:50)   2022/04/04 12:00

★2022年04月04日(月)

ケアマネさん、頑張って!|Dr.和の町医者日記

コロナ禍においてもケアマネさんは頑張っている。

「月刊ケアマネジメント」に毎月連載しているが、今年の2月号3月号に書いた記事をご紹介したい。

月刊ケアマネジメント2022年2月号  

「コロナ時代のリビングウイル」 長尾和宏こちら


「痛くない死に方」「けったいな町医者」再上映の反響

昨年2月に公開されてロングランとなった2本の映画「痛くない死に方」と「けったいな町医者」は、それぞれが映画賞を受賞し11月から再び全国の映画館でアンコール上映されています。筆者は時間が許す限り全国各地の映画館での舞台挨拶を50回程度繰り返しています。鑑賞したばかりの市民の声を直接聞くためです。「尊厳死を知らなかった」とか「リビングウイルを書きます」などの感想を頂くたびに、2本の映画を応援してきてよかった、と感激します。まだまだ尊厳死リビングウイルの啓発の必要性を体感します。2本の映画は、劇映画とドキュメンタリー映画でワンセットです。おかげ様で2本とも高い評価を得てヒット作品になりましたが、まだ観ていない人も多いので今後も啓発を続けていきます。


 実はケアマネさんに一番観て欲しいと願っています。なぜなら「尊厳死」や「リビングウイル」を、筆者の知り限りではケアマネがそれらをあまり知らないからです。関心が無い、言葉さえ聞いたことが無い、というケアマネが大半です。看取り寸前の患者さんに接して慌てて勝手に救急車を呼ぶケアマネは10年前より少なくなりましたが、まだいます。だから是非機会があれば2本の映画を観て欲しいのです。コロナが明けたら地元の公民館ででも上映会を開催して頂ければ嬉しいです。なぜならケアマネこそが「人生会議」の推進者だからです。


2022年初頭の在宅医療と介護施設

 2022年の年が明けても多くの介護施設では相変わらず部外者の面会制限が続いています。第六波が急激に進行している中、2年以上閉じ込めたままの在宅医療や介護現場になっています。厳しい感染症対策を施したうえで短時間だけ許可する施設が増えていますが、大切な人の死に目に家族がなかなか会えないこと自体、異常です。また密室でどんな医療が行われているのか見ることもできないのも危険です。


こんな異常事態が2年も続けば慣れてきますが、我々は早くコロナ前に戻す術も考えるべきでしょう。2年間、一度も面会制限をしてこなかった愛媛県の「あんき」や鹿児島県の「いろは」などの介護施設があることも知っておくべきでしょう。 終末期医療において家族との関係性はケアマネにとって非常に大切です。ZOOMなどを用いたオンライン面会は、まさにコロナ禍のいい産物です。なんとなく味気ない一方、もちろん便利さも沢山あります。ポストコロナにおいても、遠くの長男長女とのコミュニケーションにオンライン面会を活用すべきでしょう。本人の本音をオンライン画面を通してでも家族は知るべきで、それを引き出すのがケアマネの役割だと考えます。


「自宅で亡くなりたい」と言う人が増えている

コロナ禍以降、「自宅で亡くなりたい」と自分で言う人が間違いなく増えています。当院における在宅医療の仕事量は年々増大しています。国は20年以上、在宅医療を推進してきましたが、コロナ禍が強力に後押した恰好になっています。今後、2025年問題に続き2040年問題が待っています。年々、亡くなる人が激増するのは確実です。そんななか、本人の意思をどう尊重するかという命題があります。意思決定支援と言われますが、そもそも本人の意思を引き出すスキルがケアマネにも求められています。


コロナ前は「病院で看取りたい」と思っていた家族が、ここにきて急に「自宅で看取りたい」と希望を変えた場合、ケアマネは、どうすればいいのでしょうか?万が一、再び昨夏の第五波のような悪夢になったとき、コロナ感染した超高齢者や老衰患者さんにどのように対応していけばいいのでしょうか? 意思決定支援は、コロナ禍においてもケアマネと看護師が主導すべきです。


是非、拙書「訪問看護師とケアマネのためのアドバンス・ケア・プラニング入門― ACP人生会議とは何かー」(健康と良いともだち)をご一読頂ければ幸いです。できるだけ分かり易くリビングウイルや尊厳死を解説しています。以下、ケアマネが知っておくべきリビングウイルと人生会議の基礎知識について述べます。


そもそもリビングウイル(LW)とは

公益財団法人・日本尊厳死協会を御存じでしょうか。リビングウイル(LW)の普及啓発をする市民団体であり約10万人の会員が登録しています。LWとは終末期の療養に関する希望を書いた文書で、憲法で保障された幸福追求権のひとつです。死後の遺産整理などの希望を書いた「遺言状」と違い、生きている間の医療に関する本人希望(LW)は「命の遺言状」とか「生前に開封する遺書」とも呼ばれています。しかし日本では遺言状と違い、LWの法的担保はありません。そこで病院や施設や自治体により様々な様式のLWが工夫され使われていますが、多くが親族の署名を添える「事前指示書型」になっています。


LWを尊重し延命治療を控え自然な経過に任せると同時に充分な緩和ケアを提供した結果の最期は、「平穏死」「尊厳死」と呼ばれています。 穏やかな最期、つまり尊厳死を望む人が年々増えています。しかし現実には真反対の形の最期になることのほうが圧倒的に多いのです。また病院では認知症のために本人意思が不明のまま様々な医療処置が自動的に施されることも少なくありません。


一方、欧米では自己決定という文化があるので多くの成人がLWを表明していてその法的担保を終えています。台湾は2000年に、韓国は2016年に法的担保を終えました。しかし日本ではいまだLWの法的担保がないので、家族の意向に盲従せざるを得ない時が多々あります。日本では死をタブー視する傾向もあり、LWの普及啓発が欧米諸国のなかで最も遅れている国です。LWを表明している国民は約3%程度と推計されていて、欧米と比べてひとケタ少ないです。その結果、患者がLWを提示しても「そんなもの知らない」と言われるケアマネや医師が多いと聞きます。まずはLWとはなにか、多くのケアマネに知って頂きたいのです。


「人生会議」の核はLW 

比較的元気な時からもしもの時の療養の場やケアについて話し合いを繰り返すプロセスがアドバンスケアプラニング(ACP)です。数年前から国策となり、愛称が「人生会議」と決まりました。本人意思を家族や多職種が何度も話し合うことで本人の意思をいい意味で「忖度」する方策が人生会議です。医師やケアマネなどの第三者だけで勝手に決めるというものではありません。


人生会議のキーワードとは、対話、プロセス、できれば記録に残す、何度も話し合う、一度で決めない、などです。 最も大切なことはLW(的なもの)が人生会議の「核」であり、入り口であることです。口頭でもいいので本人の意思が引き出せると人生会議はスムースに運びます。


柳田邦夫氏の言葉を借りるならば、一人称(LWなどの本人の意思)、二人称(家族の想い)、三人称(医師の想い)を人生会議で「2.5人称の意思」にまとめるプロセスが人生会議なのです。LWは文書で、人生会議はプロセスです。一番重要なことは人生会議の核はLWなどの本人意思であり、両者は包含関係にあることです。


しかしそもそも日本人は奥ゆかしい民族で自己主張しないことが美徳とされてきました。しかしどこまでを望むのかという患者側からの意思表示があれば対話はスムースに運びます。 多くの医療現場が困っているのは認知症の人の終末期医療です。医療の進歩に伴い人生の最終段階においても多種多様な選択肢があります。筆者もこの人にどこまでやるのかという命題に患者・家族と共に悩む日々です。当然ながら認知症=意思決定できない人、ではありません。会話が全く成立しない人でない限り、上手に聞けば意思表示できることがよく経験します。


意思表示と意思決定は異なりますが、家族や医療・介護スタッフが上手に介助することで本人のお考えを聞き出すことが多くの場合可能です。それを基に多職種で対話を繰り返すことで丁寧な意思決定を心がけています。ケア会議の場で「その人の最大の利益(ベストインタレスト)とはなにか」についての対話、すなわち人生会議を繰り返すこともケアマネの大きな仕事です。


コロナ禍におけるLWの意義

認知症の方が誤嚥性肺炎でどこまで入院加療すべきか。徐々に食事量が減った時に胃ろうなどの人工栄養をすべきか。90代で慢性腎不全に至った人に人工透析を導入すべきか。そして本人が透析中止を希望した時、どう対応すべきか。さらにコロナ禍においてもコロナ感染が判明しても入院を拒否されたら。あるいは人工呼吸器を拒否されたら・・・


そもそもコロナ医療における入院や人工呼吸器は救急救命処置であり延命処置ではありません。しかし、もしコロナに感染しても自然に任せて欲しいと真剣にお願いされる患者さんが少なからずおられます。筆者は携帯電話やZOOMを利用した「緊急人生会議」を提唱してきました。コロナ禍においても、通常在宅においてもコロナ在宅においても丁寧に実践してきました。


コロナのような急性疾患においても、本人と家族の意思を尊重できるのであればできるだけ尊重するのが医療倫理であると考えます。 末期がんや老衰における在宅看取りはほぼ全例が尊厳死です。LWの法的担保はないものの尊厳死は社会的にはほぼ容認されていると考えています。


一方、コロナによる在宅看取りはLWを核とした人生会議というプロセスを経れば容認されるのでしょうか?筆者は一例も経験がありませんが、病床に余裕があってもそれを希望される患者さんが何人かおられたと聞きます。おそらく現時点では答えはないのでしょう。また感染爆発は災害医療なので、そこに「トリアージ」という概念も入ってくるので、議論は複雑になります。しかし第6波が襲ってきた今、あらためてLWや人生会議の意義を考えて欲しいのです。

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月刊ケアマネジメント2022年2月号特集

 「抗認知症薬の真実」   長尾和宏こちら

昨年(2021年)の年末、新しい薬をめぐってのある報道に僕は少安堵しました。コロナウイルスの新薬のことかって? いいえ、新しい認知症の薬のニュースです。以下、毎日新聞の2021年12月22日の記事より抜粋しましょう。         


 〇アルツハイマー治療薬「承認可否、年数かかる」 専門部会「継続審議」 〈厚生労働省の専門部会は22日、米製薬会社バイオジェンと日本の製薬大手エーザイが共同開発したアルツハイマー病の新薬「アデュカヌマブ」の国内での製造販売承認について、今後の臨床試験(治験)結果などを待って再び審議する「継続審議」とした。アルツハイマー病は根本的に治す方法が見つかっておらず、進行抑制を狙う治療薬として期待されていた。 専門部会は「現時点のデータからは有効性を明確に判断するのが困難」と指摘。今後、追加データが提出されれば有効性や安全性を再検討し、その結果に応じて「再度審議する必要がある」としている。そのため、承認可否の判断には「一定程度の年数はかかる」(厚労省幹部)という。  


アルツハイマー病は、脳の中に有害なたんぱく質である「アミロイドβ」が蓄積し、神経細胞を壊すことで発症すると考えられている。アデュカヌマブは治験で、投与した患者のアミロイドβを減らす効果が確認されたとするが、専門部会は▽申請の根拠とされた二つの国際共同治験の結果に一貫性がない▽アミロイドβの減少と症状の改善との関連性が確立していない▽副作用として脳の浮腫や出血などがみられる――として判断を見送った〉 


* そう、僕はこの新薬の承認がひとまず見送られたということにホッとしたのです。世の中、コロナ流行の真っ最中でしたから、読者の皆さんもそれほど記憶に残っていないかと思いますが、昨年の6月、アメリカFDA(米食品医薬品局)が「アデュカヌマブ」を迅速承認、「アルツハイマー病患者にとって、この治療薬の恩恵がリスクを上回ると結論づけた」と説明しました。さらにこの薬を、エーザイと共同開発先の米製薬会社バイオジェンは、4週に1回の点滴投与による価格が、患者1人当たり年約610万円(!)と発表したのです。


610万円......まだ海のものとも山のものともわからない新しい認知症のお薬に?僕は首を傾げました。昨夏のこの発表時、僕が週に一度配信している有料メルマガ「まぐまぐ! 痛くない死に方」には、読者の皆さんから多くの質問が寄せられたので、「ここだけの話」ということで、以下のようにお答えしました。これは今から半年以上前の僕の考えです。


* <質問1〉このニュースを聞いたときの先生の第一印象を教えてください。


〈お答え〉 悪夢再び...と思いました。すでに、テレビで報道を見た何人かの患者さんが「この薬を使いたい!」と僕に言ってきましたよ。ああ、罪深いメデイア。溜息が出ます。


* 〈質問2〉アルツハイマーが根本的に治る?そんなことありえるの?


〈お答え〉アミロイドβは認知症の原因ではなく結果というのが通説です。以前のアミロイドβ仮説は既に破綻しています。本薬は、軽度認知障害(MCI)のアミロイドβを減らす薬であり、現段階の報道を見る限り、認知症を予防する効果はあっても、治すものではないと考えます。


* 〈質問3〉この薬が承認されたら、今使われている抗認知症薬は消えますか?


〈お答え〉消えないでしょうね。なぜなら、他に適応をとったないからです。


* 〈質問4〉そもそも「アミロイドβ犯人説」って数年前に、メディアがこぞって否定していませんでしたっけ?NHKでそんな番組を見た記憶があるのですが、そのNHKが大々的に報じているのって、なんなのでしょうか...?


〈お答え〉コロナ禍のなか、明るいニュースが無いからでしょう。世界的に見て、日本がワクチン敗戦国だとされている今、エーザイという、国内製薬メーカーが、米国製薬会社のバイオジェンと共同開発したという点が光明のように映ったのでしょう。民放テレビ局からすれば、エーザイは、巨大なクライアントですしね。「日本、すごい!」というカンフル剤が国民に必要だと考えたのかもしれません......(溜息)。しかし、そもそも、FDAがいったん門前払いした薬を、再承認した例は過去に一度もなく、極めて異例の仮承認です。謎です。   


* 〈質問5〉なんで610万円もするんですか?がんの分子標的薬のオブジーボもそうでしたが、貧乏人は新薬を使えずに死ねということでしょうか?


〈お答え〉オブジーボ(小野薬品/ニボルマブ)は確かに劇的にがんに効く人がいます。余命数カ月と宣告された後、この薬で2年お元気でいる方を知っています。多くの結果が出て、徐々に安価になっていくでしょう。しかし、抗がん剤と認知症薬の報道は、分けて考えるべきです。報道を見るかぎり、この薬は先述したように認知症への進行を遅らせるものですから。 もしも保険適応されるなら。国家財政が破綻するのは明白です。 コロナの後でワクチンや新薬を大量に購入した後なのですから、なおさらです...。


庶民は、新しい薬に過度な期待を寄せるよりも、歩いて予防をした方が、お金はかからないし、副作用もありません。どんな予防薬よりも、歩行が勝ります。ですから、まずはお金持ちの人に「実験台」になってもらうと考えたらどうでしょうか?


〈質問6〉この薬の承認が下りたら、長尾先生も患者さんに使いたいですか?


〈お答え〉僕が使うことはないでしょう。値段が高すぎるし、胡散臭さを拭いきれません。まあ、しばらくは承認は下りないでしょうね。......でも、国内の臨床治験は僕も厳しく注視することとします。おかしなエビデンスが出た際には、追求していくつもりです。  


さて、この回答から半年以上が経ちましたが、僕の考えはまったく変わっていません。僕は、2015年に「抗認知症薬の適応処方を実現する会」を、同じ思いで活動している医療者や介護者たちと、手弁当で立ち上げました。東京や大阪や兵庫で、何度も勉強会を重ねていき、多くのケアマネも賛同してくれるようになりました。 本誌の読者である優秀なケアマネさんならば、一度は当会の名前を聞いたことがあるはず、いや、知っていてほしいと強く願いながら、この原稿を書いています。


この会は、世界中で一番使われている抗認知症薬・アリセプト(一般名ドネペジル塩酸塩錠)の処方への疑問からスタートしました。1999年11月に発売されたアリセプトは、3㎎から開始して1~2週間後に5㎎に、さらに病状に合わせて10㎎まで処方せよ、という増量規定を設けました。 また、2011年に相次いで発売されたレミニール(一般名 ガランタミン臭化水素酸塩口腔内崩壊錠)、メマリー(一般名 メマンチン塩酸塩)、リバスチグミンのパッチ製剤もまた、アリセプトに倣ってそれぞれ増量規定を設けました。これは、実は我が国だけの特別なルールでした。


結果的に、抗認知症薬の過剰投与が常態化、薬の副作用による暴力などから、家庭崩壊に追い込まれるケースもいくつか見てきました。そもそも、なぜ処方薬は医師しか処方できないのか?それは、患者さんご本人の年齢、体重、症状、薬の感受性に応じて医師が勘案できるからです。文字通り、匙加減が大切。しかし、なぜか認知症医療においてのみ、医師の裁量が認められないという由々しき事態が起きました。  


アリセプト3㎎の投与で穏やかになっていた人が、5㎎に増量するや否や、表情を失ったり、暴れ出したり、徘徊が始まったり、性格が変わってしまったと訴えるご家族が後を絶ちませんでした。どう考えても、おかしな事態です。しかし、医者が勝手に減らすとレセプトが通らずに医師がペナルティを受ける。一体薬は誰のため? なんのためにあるのだろう? そんな疑問と怒りから、立ち上げたのが「抗認知症薬の適応処方を実現する会」です。


こんなこと、本当はやりたくなかった。やっても医者としては何の徳もありません。しかし、誰かが声を上げなければ、苦しむのは患者さんとそのご家族です。僕たちは、全国の介護家族、介護関係者から抗認知症薬の副作用情報を集めるとともに、山東昭子参院議員に名誉顧問になっていただき国会へ働きかけて、厚生労働委員会で質問を行いました。 山東議員は、「私の母も以前、認知症治療薬の副作用で苦しんでいたことがあります。適切な薬の使い方が行われるように努力していきたい」と訴えてくれました。 その結果、わずか半年という異例のスピードで僕らの主張は認められ、2016年6月1日、厚労省は「理由がはっきりしている場合は、医師が少量投与してもレセプトはカットしないように」という事務連絡を出し、少量投与を含む適量処方が認められることになりました。


これで世の中は変わる! 苦しむ患者さんとご家族が減るはずだ! この会を立ち上げてよかった! あの日胸がいっぱいになって仲間達と記者会見をしたことを、僕は忘れません。


さらに、2019年1月に開かれた厚労省の有識者検討会「第9回 高齢者医薬品適正使用検討会」では、抗認知症薬を使用中に幻覚や暴力、めまいなどの副作用が疑われる症状が出た場合は、医師らに中止や薬の変更を検討するよう求めるという方針を出しました。この背景には、2018年8月、フランス保健省が専門委員会の提言を受けて、同国内で承認されていた抗認知症薬の保険償還を停止、全額自己負担とすると公表したことも大きく影響していると考えます。


「アルツハイマー型認知症の治療に関するベネフィットを示すエビデンスと害のバランスを再評価した結果、健康保険の適用を正当化するには不十分と判断した」との見解を示したことは、製薬会社にとっては、世界規模の「不都合な真実」だったことでしょう。これに先立って、一部の海外企業は抗認知症薬の開発から撤退することを発表しています。 しかし大変残念なことに、我が国の医療界が大きく変化することはありませんでした。なぜか?主要メディアのほとんどが、これらのニュースを大きく取り上げなかったからです。厚労省の番記者を名乗りながら、記者会見にすら来てくれない大手メディアの記者もいました。大きな問題提起をしたものの、その先の壁は思いのほか高いと感じて悲しかったです。新聞もテレビも、大手製薬会社の広告が毎日のように入っています。購読者や視聴者が年々減っている今、広告費を無視することはできません。


スポンサーのほうから何も圧力を加えなくとも、「こんな記事を出したらスポンサーを怒らせてしまうかもしれない、次からウチに広告を入れてくれないかもしれないな」というメディアの忖度が自動的に働くということは、東日本大震災の原発報道以降、ワクチン副反応報道に至る今まで、数えきれないほどあるはずです。


一体、新聞やテレビは誰のため?なんのためにあるのだろう? と首を傾げながら10年が経過してしまいました。 結果、未だに増量規定撤廃のニュースを知らないケアマネさんや医師がたくさんいます。「抗認知症薬は期間が経ったら増量し最高量までに上げるもの」だと思っている人です。


ですから、この記事を読んでくださった皆さんは、是非、利用者のご家族にこの話題を振ってみてください。もちろん、増量して平和に過ごしているのならそれに越したことはありません。しかし、突然症状が悪化した、性格が激変したなどと困っているご家族とは、一度増量規定について話してみてほしいのです。 さて、もう一つの問題として、我が国の超高齢者に対する処方率の高さがあります。


医療経済研究機構の発表によると、アリセプトをはじめとする先の抗認知症薬4種が、85歳以上人口の17パーセントに処方されていました。さらに年間処方量の約半分(47%)が85歳以上の超高齢者であることもわかりました。この背景には、脳神経内科医9000人の組織である日本神経学会が、アルツハイマー型認知症の患者にも薬を処方するよう強く勧めていることなどが考えられます。しかし、同学会の指針は、「85歳以下のエビデンス」に基づいたものであり、85歳以上の超高齢者についてはデータが乏しいのが実情です。85歳以上に勧めるための科学的根拠(エビデンス)を、85歳以下のデータによって表明するというのは、ちょっと理解に苦しみます。


事実、1998年に行われたアリセプトの臨床試験(第Ⅲ相試験)の資料を見ると、対象の欄に「80歳以上の高齢者は除外する」と書かれているではありませんか......。 抗認知症薬に限らず、平均寿命を超える超高齢者には、なるべく薬を使わないほうがいいというのが、医者の真っ当な判断であるべきです。高齢になると体格も小さくなり、薬を体内で分解して排泄する能力が低くなることから、薬が効きすぎたり、副作用が強く出るようになり、場合によっては死亡リスクを高めることも証明されています。


医療者の多くは、20世紀末あたりから科学の進歩とともに、「エビデンス病」というやっかいな病にかかってしまいました。しかし、何かにつけて「エビデンスを示せ」と上からものを言う人ほど、実は、現場を知らない(あるいは本気でやっていない)机上の空論者である可能性が高いです。


良い医療を作るのは、エビデンスだけではありません。実は、それを扱う人間なのです。「匙加減」。これほどセンシティブでハイレベルな医療技術はないでしょう。それは、介護も同じです。
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月刊ケアマネジメント2022年3月号
前頭側頭型認知症を知るこちら


前頭側頭型認知症とは
認知症といえばアルツハイマー型認知症と同義語だと思っている方が多いように感じます。しかし認知症とは100~200もの病気の総称と言われています。その代表格がかの有名なアルツハイマー型認知症で、認知症の約6割を占めると言われています。そして2番目に多い認知症がレビー小体型認知症です。これは、幻視や夜中に大声を出すレム睡眠行動障害や薬剤過敏性が特徴で、大雑把にいえばパーキンソン病と親戚のような病態です。今回は第三の認知症とも言われる前頭側頭型認知症についてケアマネさんが知っておくべき知識についてお話しします。


この病気を知らないと、ケアマネも家族介護者の方も大変苦労し、利用者は不幸になります。しかし最低限のことを知っておけば一番扱いやすい認知症になります。つまり知っているかどうかだけで患者さんの運命は天と地くらい違ってくるのです。今回、在宅で介護する家族に対して、ケアマネジャーができることについても触れます。


まずは、この病気は読んで字のごとく脳の前頭葉と側頭葉が特に萎縮するタイプの認知症です。脳のCTをとると素人でも分かるくらい前側と横側が骨と脳の隙間が空いています。前頭葉といえば人間の「理性」の中枢です。人間が人間たる所以は前頭葉にあると言っても過言でもありません。その場所の機能が低下すると種々の欲望の抑制がききにくくなります。


「我慢」ができないので暴言や暴力が出やすくなります。このタイプの認知症の人は感情を抑えられないのが特徴です。暴言や暴力を見たら介護職員は「問題行動」と表現しますが、そもそもそれを抑えられない病気であることを理解しましょう。またレビー小体型認知症をうつ病型の認知症と呼ぶならば、前頭側頭型認知症は興奮系認知症と言っていいでしょう。


一方、側頭葉は言語の中枢ですからそこが萎縮して機能が低下すると言葉が分からなくなります。言葉が理解できないと徐々に意思疎通が困難になります。相手が言っている言葉の意味が理解できません。「右手で左肩を叩いてください」と命じても、「右手」も「左肩」も「叩く」もすべて分かりません。本人にとっては全く知らない言語で話しかけられているのと同じで、強いストレスを感じます。また自分の心の中にある言葉も上手く表出できなくなります。だから介護者からみれば本人が何を言っているのか分かりません。このように言語の受け止めも表出もできなくなるので意味性認知症とも言います。


前頭側頭型認知症は、前頭葉症状(抑制できない)が目立てばピック病、側頭葉症状(言葉が通じない)が目立てば意味性認知症、と細かく分けられます。片方だけのこともあれば両方ある病態もあります。 抗認知症薬は禁忌!暴言や暴力を見たケアマネや介護職は「認知症が進行した。早くお薬を」となりがちです。それを受けた医師がドネペジル(商品名アリセプト)などの抗認知症薬を開始したり増量するのは最悪のパターンです。易怒性や暴力はさらに酷くなり、精神病院に行くしか道がなくなってしまいます。 


そもそも抗認知症薬は興奮剤と考えて下さい。脳内のアセチルコリンという神経伝達物質を増やすとされる薬剤ですが、人工的に興奮させることで脳内ホルモンのバランスを崩すこともある薬剤です。元々興奮傾向にある人に興奮剤を投与するという事は、ボヤに油を注いで大火事を起こすのと同じ行為です。抗認知症薬は前頭側頭型認知症には投与してはいけない(禁忌)薬剤であることを基礎知識として知っておいてください。こんな基礎知識がない医師が多いので、もしもそれを見たらケアマネがストップをかけて下さい。ケアマネは患者さん側の立場に立ってください。


抑制系薬剤を上手に使う
前頭側頭型認知症の人の介護のコツは、暴言や暴力で困ったときは抑制系の薬を上手に使う事とユマニチュードの活用につきます。抑制系の薬剤としては抑肝散という漢方薬があまりにも有名です。しかし漫然と長期間使うのではなくあくまで期間限定での使用に留めることが必要です。


漢方薬で効果不十分な場合は、「抗精神病薬」と呼ばれる劇薬を処方せざるをえない状況が現場では時々あります。いくらユマニチュードで頑張っても、現実には薬の力を借りないとでもどうにもならない場面があります。「抗精神病薬」はごく少量から開始して様子をみながら徐々に増減することが原則です。作用が弱い薬剤を少量から使うことが基本です。


具体的にはチアプリド、クレチアピン、リスペリドン、オランザピンなどの抗精神病薬を使用することが多いです。糖尿病がある人にはクレチアピンは使えないことは覚えておかないといけません。眠気やふらつきや食欲不振などの副作用があり得るので、小柄な人や衰弱した人においては最低量の半分や4分の1からスタートするなど細かい配慮が必要です。


家庭天秤法を知る
「コウノメソッド」という認知症医療を御存じでしょうか。僕は数年前に河野和彦先生の講演を何度か聴き、著作も何冊か読み認知症の理解が180度変わりました。河野先生のご功績はたくさんありますが、ひとつはこの興奮系認知症の啓発をしたことだと思います。前頭側頭型認知症は決して稀ではなく、画像と血液検査と臨床症状でそう診断できればウインタミンだけでも劇的に改善することを河野先生が広めたことです。ウインタミンは抗精神病薬のクロルプロマジンのことで通常は1錠25mgのコントミンが最小単位です。しかしそれよりもずっと少ない量をまるで料理の隠し味のように使う方法を発見したのです。


薬局でウインタミンを粉に砕いてもらい朝に4mg、夕に6mg飲ませるだけで前頭側頭型認知症の人の困った症状が嘘のように改善するケースを多く経験しました。僕はこの方法でこれまでに何十人もの前頭側頭型認知症の人の介護者や介護職員に感謝され、なんと「名医」とまで言われてきました。


興奮の度合いは日によって違います。気分は誰でも気候や気圧によって微妙に変化します。だからその日のご機嫌にあわせて家族や介護職員がウインタミンの量を2倍量にしても構わない、という事前指示を医師があらかじめ出しています。「家族が医師の指示の範囲内で薬の量をその日の体調に合わせて調節してもよい」というやり方は事前指示と呼びます。医師が看護師に事前指示を出すことはよくありますが、認知症療養においては介護家族や施設職員にも出しておく方法は現場では非常に役にたちます。


そうした薬物の調節法を河野先生は「家庭天秤法」と呼ばれています。毎日、朝夕、機嫌という天秤を家族や介護職が調整するのです。ウインタミン以外の抗精神病薬でも家庭天秤法を指示する場合があります。ケアマネさんはウインタミンの少量投与や家庭天秤法を知っておかないといけません。


また前頭側頭型認知症を知らない医師もたくさんいるので、精神病院に送られる前に前頭側頭型認知症をよく知っている医師に主治医交代のアドバイスをして差し上げるのも患者さんの人権を守るうえでやらざるを得ない場合があると考えます。多くの医師は自分から「僕は分からないから交代を」とは言いません。分からないとどんどん薬を増やして「炎上」させる医師がいます。


特に抗認知症薬に関してはブレーキの無い車のようなことになり精神病院に送られた、という話を聴いてきました。
こうした悪循環を止めることができるのはケアマネしかいません。
 
誰でも名医、名ケアマネになれる  
一般に認知症の在宅療養は介護が大変だから困難だというイメージがあります。
しかし医学的に難しいのはレビー小体型認知症であり、アルツハイマー型や前頭側頭型はむしろ扱い易いタイプだと思います。残念ながら認知症の医学教育ではほぼ薬物療法しか教えません。
しかし前頭側頭型にはそもそも抗認知症薬は禁忌で、ユマニチュードが主体なのですがそれを教えていません。


誤って興奮剤を飲ませて興奮が増せば「効かなければ増量だ」という間違った刷り込みが残っています。筆者は前頭側頭型認知症が一番好きです。なぜなら医療の力が一番発揮できるからです。適切にこの病態であることを見抜ければ、あとはやることが決まっているからです。


代表的なケースを紹介します。ある日、生活保護課から70代の生活保護の男性の往診を依頼されました。その男性は毎日怒りまくり、訪問医を断ってしまうので在宅主治医が決まらないと。しかし食事を作ってくれるヘルパーとだけは口をきくそうです。これまで数人の在宅医が来ても部屋に入ろうとすると「帰れ!」と怒鳴りはじめ罵声が続きこれまで近づけた医者はいない、との情報を頂きました。僕はこれを聞いただけで「ああ、その人は前頭側頭型認知症だ」と思いました。


恐る恐る訪問すると案の定「帰れ!」から始まり、暴言の数々が発せられました。その内容もほぼ支離滅裂だったのでそれだけで前頭側頭型認知症だと臨床診断しました。臨床診断とは検査無しで診察だけで診断することです。これまでどの医者も検査に連れ出すことができなかったので仕方がありません。すぐにウインタミン10mg(朝4mg、夕6mg)を処方してヘルパーさんに朝夕のお茶に入れて飲ませるように指示をしました。


翌日、ケアマネから電話がかかってきました。「先生、嘘のように穏やかになりました。いったい何をしたのですか?」と。さっそく訪問すると部屋に入っても大声を出しませんでした。前日とは大違い。そこでユマニチュードを使いました。すると体に触れて診察することもできました。最高のご褒美である「笑顔」も出ました。一部始終を見ていたヘルパーは目を丸くして驚きました。さっそくケアマネから電話がありました。「先生は魔法使い。名医だわー」と。
そう、前頭側頭型認知症を知っているだけで誰でも名医、名ケアマネになれるのです。
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というわけで、
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ケアマネさん、逆境に負けず、頑張ってください!!

PS)

#694_善意と悪意の境界線~僕は命を助けたいだけなのに!長尾和宏コロナチャンネル - ニコニコ動画
毎日、多くの市民や子供が殺されている光景は僕にもすごく辛い。
なんのために人の命を救う「医療」があるのか、分からなくなる。
そりゃそうだろう。
「努力義務」なく進まぬ接種 10歳未満の感染多く(産経新聞) - Yahoo!ニュース
一方では、
ワクチン接種直後に息子が死亡 悲痛の父が嘆く「救済制度の運用実態」 - イザ!
令和4年4月4日4時(午前・午後)44分44秒(4が8つ並び)の日。
これは、2022年2月22日2時22分22秒(2が11並び)以来、です。
どうでもいいことかもしれないけど、僕は数字の並びが気になるタイプ。
そんな特別な今日、皆様は、どこでなにをしておられるのでしょうか?
今日一日が平穏でありますように。